醪(もろみ)を搾ったまま、何も加えず、何の調整も行わない原酒は、アルコール度数が20度前後と高く、その味わいは力強く濃醇で、それぞれの日本酒が持つ個性を鮮明に感じることができる。
原酒を飲む際は、この力強い個性を損なうことなく、季節や飲むシーン、料理などに合わせることが大切だ。
アルコール度数が高いので一気に飲むようなことは避ける。
ゆっくり、じっくりと、その原酒の個性を味わうことが原酒の飲み方の基本だ。
それが、冷酒、冷や、燗酒だ。
ちなみに、「冷酒」は冷蔵庫や氷で冷やした日本酒で、「冷や」は常温の日本酒である。冷やには雪冷え(5度)、花冷え(10度)、涼冷え(15度)などのように温度によって風情ある名前がついている。
原酒はその酒の個性を味わうのが醍醐味。
そのためには、どのような温度で飲むのが良いのか?
日本酒は5度違うと香りや味わいがかなり変わる。
まずは常温(20度前後)の「冷や」でその原酒本来の風味を確かめることだ。
そのあとは、温度の違いによる変化を楽しむのも一興だろう。
とは言え、原酒の飲み方に「こうでなければならない」というものはない。
上記の二つも、原酒をより楽しむための目安のようなものだ。あくまでも自由に原酒を楽しんでもらいたいが、
それぞれの原酒の個性をより深く、より繊細に楽しむこともできる。
つまり、利き酒である。
利き酒は「見た目」「香り」「味わい」の三つで確かめる。
白い猪口原酒を注ぎ、透明度、色調を見る。
次に、猪口に鼻を近づけ香りを確かめる。
そして、少量の原酒を口に含み、息を軽く吸いながら舌の上で転がしてみる。
このときに感じる香りを「基調香」という。
飲み込んだあとに鼻に抜ける香りは「含み香」という。
目、鼻、口で総合的にその原酒を知ることができるのである。
原酒だけをそのまま飲んでも美味しいものだが、料理と原酒を上手に合わせることで、その双方の味わいをさらに広げることができる。
そのヒントは「地酒」という日本酒の呼び方にある。
元々、酒造りは地域に根差したもので、その土地の米と水で造ってきた。当然、その土地の食材との相性はいい。
同じ産地の原酒と食材を使った料理を合わせることから楽しんでみたいものだ。
魚介類の料理は刺身のように素材の味を活かしたものが多く、海の近くの酒蔵で造られる原酒は、そうした料理に合う端麗な味わいのものが多い。
山間部や内陸では塩漬けなどのように味の濃い料理が多く、そのため内陸で造られる原酒は、濃い料理の味に負けない濃厚な味わいのものが多い。ただし、この土地の食材を使った料理と原酒は、普段使いの地元で親しまれている原酒であり、純米や吟醸といったより上質の原酒はその限りではない。
その土地での消費だけでなく、全国に出荷している純米や吟醸といったより上質の原酒には、さまざまな食材を使った料理との相性が良いものが多い。
原酒を美味しく飲むために、保存の仕方には特に注意したい。
基本的には温度の低いところで、日光が当たらない冷暗所が好ましいとされている。
それでは、火入れをした原酒と、火入れをしていない生原酒の保存方法を紹介しよう。
化粧箱がある場合は箱の中に入れて、日光の当たらない冷暗所で保存。
賞味期限は未開封で製造日より10ヵ月から1年程度。
開封後は数ヵ月以内に飲み切るとよい。
化粧箱がない場合は新聞紙で包むこと。
冷蔵庫での保存が原則。できればチルドルームに保存すると、生原酒特有の
新鮮な状態をより保つことできる。
賞味期限は未開封で製造日から1年以内。
開封後は冷蔵庫で保存し、なるべく早く飲み切る。